解文書

セットアップを済ませてください

「ひとが好き」ということ

 ソシャゲで推しのイベントが来て熱を上げていたので先週書くのサボりました。無事に走れたので良しとしましょう。

 

 今日はちょっと長いです、すみません……簡単な文章にするのが難しい事で、上手く解ってもらえるかちょっと不安ながら。

 僕が恐れるものの話をしましょう。率直に言うと死ぬことです。「物語」を打ち切られてしまうのが怖い。

 

 僕の得意なことは「良く捉えること」だと気付きました。ようは楽観なんです。こうならなかったら僕はとっくに折れてしまっていただろうし、こうだから僕は「能天気で脳内が花畑の御都合主義な幸せ者」と解釈されもするのでしょう。違う、とは言い切れません。できる限り世界は綺麗だと思い込んでいたいです。綺麗事を望んでいる。だから傷付かないように角を丸くして、粗をなくすために磨いて、そうしてから受け止めることでどうにか上手く精神衛生を保って生き長らえてきたのだと思います。

 「ひとが好きだ」と言うのだって、ひとをいつも羨みの、いや妬みの目で以て見てしまうことを、聞こえがいいように翻訳しているだけかもしれない。こんな視線が後ろめたいから僕は目を合わせられない。

 

 必要だと思ったので、少し、親の話をしますね。

 僕は毎日親から否定されてきました。僕は「間違い」だとされ続けてきました。「正解」だったことなど多分なかったか、どこか深いところへ埋もれてしまった。僕が本当に何をしても世間一般に害を成すから肯定するようなところがないようなモンスターだったということなのかもしれないけれど、とにかく僕はずっと、ずっと、認めてほしかったし、「間違い」を許されたかった。だから幼い頃は親に対して愚直にも「褒めて」と言ったことがあったし、脈絡もなく「いままでごめんなさい」と懺悔しだしたこともあった。親はいつ僕を棄ててもおかしくないのだと思っていた。現にそう脅されていました。だから親というのは自分の生殺与奪を握る絶対なのだと思っていた。それってもう神じゃないですか。多分信仰をしていました。寵愛を受けるために必死で、逆らえば奪われて、最悪死ぬのだと恐れていた。割と誇張でもないですよ。蹴り飛ばされて引き摺られて、鉄の物差で肌を打たれたんです。何度後ろから包丁で刺したいと思ったか、と目の前で人に話す母を、僕は昔から何度も見てきたんです。

 僕はこのヒトに認められるまで人間としては扱ってもらえないのだな、と、そういう考えに至りました。以来、「現在の自分は人間足り得ない」という感覚が付き纏うことになります。

 

 他人と接してみると、もう、皆が皆良く見えてしまうんです。

 それは容姿だったり雰囲気だったりファッションセンスとか声とか話し方とか、そういった外面もそうだし、度胸だとか博識さとか行動力とか発言力とか統率力とか記憶力とか、空気を読めるところとか、先を見越した気遣いができるところとか、ムカついた奴を一発殴れるところとか、僕よりずっと器用に流麗な言葉を扱えるところとか、褒め上手なところとか、そういう内面もそう。それから親を想うと安らげるような環境も。

 人々それぞれが自分より優れたものを持っていて、それは当たり前なのだけど、なにぶん自分はマイナスで同じ土俵に居ないものと思っているからあなたを見上げて羨んで、妬んで、同じ人間になりたかったと思っている。あなたになりたいと思っている。そうしたら自分はもっと「良作」だったかもしれないから。打ち切られる不安なんてないから。

 そしてなろうとしたところで結局なれはしないことも知っている。環境、育ち方、努力の仕方、苦難、どれも自分のレールと繋がることはないから。

 その事実が、どうしても悔しかった。納得できませんでした。できずにいる。

 もっと苦しんでいる人がいる? 違うんですよ。下を探して安心したいんじゃないんだよ。上に行かなきゃならないんだ。今の俺じゃ駄目なんだよ。今俺のレールが向いている先はいつか途切れてしまう。殺されてしまう。

 だから僕はあれもそれもできるようになりたくて手を付けて他人の作った歌を歌っていろんなグループに入りたがって同じ空気を知りたがって性感覚も混乱して、どれが正解だ? どこに居れば良識から外れない? どうすれば俺は悪じゃない? どれになればこの目をやめられる? 「半年前の駄目な自分」と違う奴にならなきゃいけない、「ひと月前の間違った自分」と違う奴にならなきゃいけない、「現在の失敗作な自分」と違う奴にならなきゃいけないんだ、ずっと、探して探して、

 そうして誰にも成れずに中途半端で沢山の名前を持つ何かが現在ここにいる。

 でもそれはすなわち、もう自分というものはオリジナルな部分だけでは構成されていなくて、沢山の憧れたひとたちの気配が混じってできているということで。その気配に護ってほしかった。僕より優れた”強い”ひと達に、刺されて殺される何度も見た悪夢から僕を護ってほしかった。きっとそのために他人が優れていると認識しやすくなっているのでしょう。この恐怖が拭えるまで、僕は延々ひとを、あなたを羨み続けてあなたになりたいと思うことを繰り返すと思います。すみません、あなたという存在価値で盾を作ろうとしているようで、不快に思わせていたら御免なさい。割と自分勝手な行動原理で御免なさい。綺麗なひと。強いひと。僕は僕のためにあなたを肯定している。でもあなたのために肯定していると捉えてもらえたなら、ほんの少し自信を持ったあなたがもっと素敵なひとに見える。

 僕はそんなことを考えているから、あなたにそんなつもりがなくても、日々あなたに生かしてもらっているのです。いつか、恩返しができたらいいのだけど。